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銀魂SS『氷菓子 後編』

これは以前友人達とやっていた銀魂サイト→小説家になろうで公開していたお話です。
銀時×神楽 風味(笑)



『氷菓子 後編』


 

 一番近いコンビニに行ったが、神楽の姿は無かった。他にも神楽の寄りそうな場所に回ったが、以下略。
 太陽が沈みかけてきたとはいえ、コンクリートジャングルの江戸はまだ汗ばむほど暑い。
 暑さと宛もなく歩き回る徒労から、銀時の苛立ちは募っていく。
(…ったく、どこに行きやがったんだアイツは)
「ん」
 銀時の横を、浴衣姿の子供達がすり抜けていく。
 そういえば今日はこの辺りで祭があるのだった。もしやそこにいるのでは、
「ったく」
 もしのうのうと祭を堪能していたら叱ってやる。それで綿飴や林檎飴やたこ焼き、焼きトウモロコシを自分の分だけ買って目の前で食ってやる。あぁ食ってやるとも!
 ずんずんと会場を歩くと、見知った黒い制服がちらほらと目に付いた。真撰組が、ここの警備でもしているのだろう。
「あ、旦那。ちょうどいいや。今呼びに行こうと思ってたんでさァ」
 ふいに後ろから声を掛けられて、振り返ると沖田が立っていた。
「? 俺を?」
「ええ。お宅のチャイナ娘がちょっと腹ァ壊しましてね」
「!?」
 実はね、と沖田は語り出した。



 話は数刻前に遡る。
 道でバッタリ沖田と遭遇した神楽は、そのまま引きずられるように祭の会場に連れて行かれた。
「はーなーせー! イヤー!! 人攫いー!!」
「うるせーチャイナ。まぁお前ェにも悪い話じゃねーから来いよ」
「何をさせる気アルか!」
「実はこの祭、ウチが協力してるんだが」
「ハァ?」
「メインイベントの出場者が病欠しちまってよォ」
「メインイベント?」
「かき氷大食い大会」
「!?」
「優勝商品はクーラー…」
「!?」
 神楽はぴたっと抵抗するのを止めた。
「何やってるアルかサド丸。早く私を案内するネ!」
「変わり身早ぇや」
 感心するように、沖田は呟いた。



「かき氷大食い大会…」
 呆れ顔で銀時が言う。
「えぇ。アイツにぴったりな演目でしょ?」
 沖田に案内され会場を歩く道すがら、事情を聞くうちにだんだん必死に神楽を探していた自分がアホらしく思えてきた。
「で? アイツはなんで腹壊したんだ? 言っとくけどアイツの胃袋マジブラックホールだから。まじハンパねーから。かき氷の大食い程度で腹壊すか?」
「いやぁ、それが…」
 確かに神楽の胃袋はブラックホールだった。マジハンパなかった。だが、
「ブッちぎりで優勝を決めた後も他の出場者の残した分まで食い…、」
「…………」
「まだ削ってねぇ氷も削らせて食らい、」
「…………」
「挙げ句、大会後にそこらの出店の食いモンを片っ端から近藤さんに奢らせては食い散らかしましてね」 
 それじゃあ流石のブラックホールも下しまさァ、と沖田はため息を吐く。
「うっ、ウチの奴が迷惑をかけたようで…」
 あんの馬鹿娘~!!
「いや、元はウチが巻き込んだことですからねェ。それに、被害に遭ったのはカモにされた近藤さんだけでさァ」
 気にしねーでくだせェと言う沖田。
「とりあえず今ァ便所籠もりから脱出してウチの休憩所で休んでますから、連れて帰ってやって下せェ」
「…あぁ」



 日はすっかり暮れた。ぐったりと元気の無い神楽を背負い、銀時は家路を行く。
「…うぅ、…銀ちゃん、まだ怒ってるアルか…?」
「うるせー馬鹿娘。そもそも何でかき氷大食い大会になんて出てんだよ」
「だって暑かったし…、それに沖田が…」
「沖田が?」
「優勝商品はクーラーだって言ったから…」
「クーラー? お前が貰ったのはクーラーボックスじゃねーか」
「うっ」
 そうなのだ。優勝商品はクーラーではなくクーラーボックス。それは銀時の肩に掛けられている。
 沖田はクーラーボックスと言いかけたところを神楽が遮ったのだ、としたり顔でのたまった。
 人の話を最後まで聞かないのが悪いのだと。
 その明らかに確信犯だろお前! 的な顔が腹立たしくて悔しくて、神楽は暴飲暴食に走った。ああ食ってやったさ! 奴らが用意したかき氷を食い散らかし、近藤の金で思う存分!
 結果として盛大に腹を下し、銀時に叱られる羽目になったが。
 だがそれとて、元をたたせば沖田が悪いのだ。
「いいよ、もう。とにかくお前はとうぶんアイス系の冷たい食いモンは禁止だ」
「えー! じゃあ今日買ったダッツも?」
「ダッツも。安心しろ俺が食ってやる…。ってもしかして、お前が手にぶら下げてるビニール袋は…」
「アイス」
「馬鹿娘ェエエエ!! 溶けてんじゃねーかドッロドロじゃねぇか!!」
「わぁ」
「わぁ、じゃねーよ!! 自然の摂理でしょ!! 考えなくてもわかるでしょ!!」
「…ごめんネ、銀ちゃん…」
「…ハァ。いいよ、もう。もっかい凍らしゃ食えんだろ」
「ん…」
 自分の背中でしょぼん、と落ち込む神楽に、さすがに叱り過ぎたか? と銀時は思う。
「…しょーがねぇな。明日、このアイス食わしてやるよ」
「!?」
「ただし! 半分だけだからな! あと、今日はもうメシ抜き!!」
「ウン!!」
 メシ抜きと言われても、神楽は嬉しかった。
「それから、暑いからって腹を出して寝るなよ。腹巻きをつけろ、腹巻きを」
「ウン」
 銀ちゃんは時々パピーみたいだ、と神楽は思う。
(…でも…、)
 神楽はそっと、銀時の背中に頬を寄せる。
 この背の男に抱く感情は、父に抱く感情とは似ているようで違うと、神楽は思った。





 銀神の親子のような関係がとても好きです。親子愛のような異性愛が好きです。

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プロフィール

なかゆんきなこ

Author:なかゆんきなこ
小説、漫画、アニメ、ゲーム大好き。
文章書き。主にTL、BL小説書いてます。

【近著】

エタニティコミックス「身代わりの婚約者は恋に啼く。」
エタニティ文庫「身代わりの婚約者は恋に啼く。」
乙女ドルチェ・コミックス「腹黒王子の甘美なる企み~結婚なんてまっぴらです!~」
エタニティ文庫「鬼上司さまのお気に入り」
エタニティコミックス「俺様御曹司は義妹を溺愛して離さない」
乙女ドルチェ・コミックス「冷徹な貴公子、絶倫になる~仕事中毒だけど溺愛蜜月になりました~」


当方への連絡・執筆のご依頼等は、
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